メジャーに挑戦する筒香嘉智選手。記者会見を見ていたら4年前のインタビューを思い出した

横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智選手が、ポスティングシステムによるメジャー挑戦を正式に表明した。10/29に行われた記者会見では、ファンへの感謝の気持ちを真っ先に伝えたあとは、質疑応答では聞かれたことに淡々と答えるのみで、リップサービス的な発言はほとんど見られなかった。慎重に言葉を選び、わからないことはわからないと言う。そんな会見の模様を見ながら、筒香選手に初めてインタビューした時のことを思い出していた。

キャプテン就任1年目のその男は恐ろしく無口だった

横浜ウォーカー2015年4月号より

横浜ウォーカーのライターとして、筒香選手に初めてインタビューしたのは、2015年の2月。沖縄・宜野湾キャンプが始まった頃だった。プロ野球の開幕直前に発売される横浜ウォーカー4月号で、初めて横浜DeNAベイスターズの大特集を組むことになったのだ。筒香選手は前年の2014年に打率.300、22本塁打、77打点とブレイク。中畑清監督からキャプテンに任命されて臨む、初めてのシーズンだった。

こちらとしては当然、前年の好成績について、そして弱冠23歳の若きキャプテンとして、威勢のいい言葉を引き出したい。しかし筒香選手の口はとても重かった。確かに事前に周囲から仕入れた情報では、どちらかといえば話をするのは苦手ということだった。しかしこれほどまでとは思わなかった。シーズンへの意気込みを聞くと「まずレギュラーになることが目標」と、目を合わせることなく、小さな声でうつむき加減に答える。新キャプテンとしての意気込みには「意識せずに、選手として自分のやるべきことをやる」。一流打者の証、3割30本100打点という数字を向けてみても「全試合、全力プレーを大事にしたい」としか語らない。

威勢のいい言葉を引き出したい記者と、リップサービスしない筒香嘉智

横浜ウォーカー2015年4月号の表紙。巻頭特集がベイスターズ、第1特集が「地元有名人のグルメ決定版」だった

横浜ウォーカーという媒体はスポーツの専門誌ではない。横浜のグルメであったり、遊びスポットであったりを紹介する情報誌だ。ベイスターズとは“横浜つながり”というだけ。決して野球好きが買うような本ではない。なので野球選手に対しても「好きなタイプの女性」とか「仲のいいチームメイト」などの、アイドル誌のような質問が求められる。そんな中で、野球の話については、できるだけわかりやすい方法で伝えなければならない。「数字で目標を」という質問を嫌がる選手が多いのは承知している。しかし読者が聞きたいのはそういうことだし、優勝へ向けての威勢のいい言葉だったりするのだ。

この時同じタイミングで、98年の日本一の中心メンバーでもあった三浦大輔手(当時) 、前年盗塁王に輝いた梶谷隆行選手にもインタビューしていた。三浦選手は自らの経験から優勝への手応え、そのために必要なことについて言及しているし、梶谷選手はトリプルスリーを目指したいと語ってくれた。ところが筒香選手だけは「レギュラーを取るために全力プレー」となってしまう。仕方なく柔らかめの質問に切り替え、「横浜で好きなスポットは?」という質問にも、「高校の時からずっと野球一筋だったから、わかりません」という。半ば誘導するように「みなとみらい」という言葉を引き出すのが精いっぱいだった。メディア慣れしていないということもあっただろうが、取材者としては実にヤキモキしたインタビューだった。

無口な23歳が来シーズンに向けて秘めていた思いとは

2015年8月、横浜スタジアムにて(撮影=小貫正貴)

しかし同時に、一人のベイスターズファンとして、その姿勢に強く感動もしていた。まだ23歳。高校を卒業して入団5年目でようやく実績といえる成績を残したばかり。キャプテンに任命されたとはいえ、周囲のほとんどは自分より年上の選手だ。やりにくいであろうことは容易に想像できる。いくら期待しているからといって、当時の中畑監督はずいぶんと高いハードルを設定したものだと感じていた。

そんな中で浮かれることなく自分を律する姿に、これからチームをけん引していこうという覚悟を見たような気がした。2014年の好成績がたまたまだったのか。それとも完全なる覚醒なのか。それを証明するためのシーズンが2015年であることを、筒香選手が何よりも理解していたのではないだろうか。

そして2015年。筒香選手はシーズンを通して4番に座り、打率.317、24本塁打、93打点とすべてにおいて前年を上回る成績を残した。幸い横浜ウォーカーのベイスターズ特集も好評を得て、2015年の開幕直前号では、さらにページを増やしてベイスターズ特集を組むことになった。そして同年2月、1年ぶりに話を聞く機会を得た。今回は新人最多セーブ記録を塗り替え、新人王に輝いた山﨑康晃選手と梶谷選手との鼎談という形だ。

初インタビューから1年。人はこんなにも変わるものなのか

横浜ウォーカー2016年4月号より

我々の前に姿を現した筒香選手は、1年前とは打って変わって自信に満ち溢れていた。こちらの質問の意図を汲み、しっかりと目を合わせて応えてくる。梶谷選手は「ゴウが4番にいるのは心強い」と語り、山﨑選手は「試合を決定づける打撃を、何度も見てきた」と称賛する。そして筒香選手自身も先輩である梶谷選手を敬い、後輩である山﨑選手をねぎらう発言を繰り返す。そこにいるには、まさに“キャプテン筒香”だった。人は1年でこんなにも変わるものなのか。2015年シーズン、前半に首位に立ちながらも最下位に終わった悔しさ、勝利への執念についても熱く語ってくれた。ただし自身の目標については「勝利にどれだけ貢献できるかを重視。数字は後からついてくる」と、やはり数字で表現してはくれなかったが(笑)。

筒香のいない2020年のベイスターズの戦いに注目

2019年最終試合。来シーズンの開幕のスコアボードはどのようなラインナップになるのだろう(撮影=小貫正貴)

今回のメジャー挑戦のための記者会見は、個人的には4年前のインタビューを思い出させるものだった。当時に比べたら態度は堂々としていたし、話し方も自信にあふれたものだった。しかしけっして大げさな言葉は発しず、一言一言を自分の言葉で懸命に伝えようとする姿がダブるのだ。今、自分が立っている場所と状況を冷静に見極め、説明できるものだけをきちんと説明する。自らの大きな決断に、過大なリップサービスはいらない。必要なのは“覚悟”だけだ。そんな雰囲気が感じ取れた。

来年の横浜DeNAベイスターズに筒香選手はいない。ここ数年は“筒香のチーム”と言われることもあったほど、チーム内外にわたって大きな影響を与えてきた。来年どんなチームになるのか想像もつかない。しかし来シーズンを託された選手たちは「筒香がいなくなったから弱くなった」とは、絶対に言われたくないだろう。そんな奮起したチームの戦い、そして海の向こうで大暴れする筒香選手の活躍が今から楽しみでならない。

文=小貫正貴

ラグビーワールドカップ、日本人の心に刺さる“ノーサイド”の精神

エンターバンクが編集・執筆した「横浜ラグビーWalker」。横浜の主要駅、ファンゾーン等で無料配布中

日本代表がワールドカップで初のベスト8に進出し、日本中が喚起に沸いている

レスラーのような屈強な男たちが正面からぶつかりボールを奪い合う。ラインアウトのボールを少しでも高い位置で取ろうとチアリーディングのようなリフトを見せる。攻め込むときのボール回しは、まるで手品を見ているようだ。あれよあれよという間にパスがつながり、一瞬誰がボールを持っているのかわからなくなる。スピード型の選手が見事な切り替えしで相手ディフェンスの間を抜けていけば自然と歓声が出るし、スクラムを見ているとつい力が入り唸ってしまう。ゴールキックの時は時間が止まったかのように息をするのを忘れている自分がいる。

「ラグビーって、サッカーより面白いかもしれない」

最近私の周辺でよく聞かれる会話だ。これまでラグビーに興味を持つこともなく、ルールもろくに知らなかった私だが、今回のラグビーワールドカップ日本大会を見て、まったく同じ感想を抱いている。特に日本代表が初のベスト8に進出し、日本中が喚起に沸いている。私のようなにわかファンは急増していることだろう。

もちろん競技は面白い。しかし多くの日本人は、ラグビーというスポーツが持つ精神性にも惹かれているのではないだろうか。

ノーサイドの精神は、武士道に通じるものがある

「ノーサイドの精神」。「ノーサイド」は、ラグビーの試合終了を指す言葉で、その瞬間、敵と味方の垣根がなくなることを意味する。スポーツは対戦相手がいて初めて成り立つことから、相手への敬意を重んじるという精神。どこか日本の武士道にも通ずるようにも感じられる。

武士道には義・勇・仁・礼・誠・名誉・忠義という7つの基本理念があるが、ラグビーには「ラグビー憲章」というものが存在する。

<ラグビー憲章>

WORLD RUGBY「競技規則」より
・品位(INTEGRITY) ・情熱(PASSION) ・規律(DISCIPLINE)
・結束(SOLIDARITY) ・尊重(RESPECT)

荒々しいイメージとは違った、気品ある言葉が並ぶ。ラグビーでは、指導者はまずこのラグビー憲章について徹底的に教え込むという話を聞いたことがある。身体を激しくぶつけ合い、ケガをも辞さず一つのボールを奪い合う。球技の中でおそらく最も過激で危険なスポーツの一つがラグビーだが、それほど危険なスポーツだからこそ、品位や規律、リスペクトの重要を説いているのだろう。

日本の初戦となった9/20、30-10で勝利したロシア戦。その試合後、日本の主将リーチ マイケルがロシアのロッカーを訪問し、互いをたたえ合った。また当時世界ランク2位の格上アイルランドに勝利を収めた日本代表2戦目では、試合終了後に日本代表に敬意を表してアイルランド代表が花道を作ったことが話題になった。

日本の試合に限ったことではなく、今回のワールドカップを見ていても、試合終了と同時に、互いをたたえあう選手やファンの姿を何度も見てきた。ラグビーには全般を通して「ノーサイドの精神」が流れているのだ。その気持ちには、武士道のDNAを持つ多くの日本人が共感するのではないだろうか

世界が驚く日本の「おもてなし力」の根底も実はノーサイド精神?

一方で日本の「おもてなし力」も話題となっている。大会3連覇を狙うニュージーランド代表のオールブラックスが、キャンプ地である千葉県の柏市で地元の子どもたちによる「ハカ」のパフォーマンスで熱烈な歓迎を受けた。その模様の動画がツイッター公開されるや、瞬く間に世界中に広がり180万回再生を突破した。また9/22に横浜の日産スタジアムで行われたアイルランド対スコットランド戦で、大会公式インスタグラムが、試合前の国歌斉唱で、英語の歌詞カードを持ってアイルランドのアンセム「Ireland’s Call」を歌う日本人の姿を公開。SNS上では「日本のおもてなしは一流」と絶賛の言葉が相次いだ。

私はもちろん日本代表を応援しているし、日本が勝てばうれしい。しかしせっかくの日本開催のワールドカップなのだから、世界最高峰の試合を見たいとも思っている。だからこそ、すべての代表にベストコンディションでピッチに立ってほしい。「敵チームだから」とか、「国が違うから」といった負の感情はそこにはない。「いい試合が見たい」「今この瞬間を楽しみたい」。おそらく日本各地で代表チームを受け入れている自治体関係の人、スタジアムで応援するファンも同じ気持ちなのではないか。

日本のこういった姿勢が特別なのか、ラグビーの世界では当たり前のことなのか、にわかの私にはわからない。しかし、日本人がラグビーをリスペクトしているという気持ちは、確実に届いていることはわかる。今大会では、試合後に両チームの選手が観客席に向かって日本式のお辞儀をしていると聞く。また台風19号の影響で、釜石で予定されていたナミビア対カナダの試合が中止になったが、被害の一報を聞いたカナダ代表選手が、翌日市内で清掃活動を実施したという感動的なニュースもあった。参加国の代表チームも日本への敬意を精一杯、形として表そうとしてくれているのだ。

ラグビーというスポーツを、一時のブームに終わらせないために

野球、サッカー、バレーボール。これまで日本では数多くのスポーツの世界大会が開催されてきた。そのたびに盛り上がるのだが、それは一時的で終息も早かった。世界大会には注目しても、国内のリーグ戦が盛り上がるまではなかなかいかない。熱しやすく冷めやすい。それがスポ―ツに対する日本人の自己評価だ。

しかしラグビーはどうだろうか。スポーツとしての面白さだけではなく、日本人として受け入れやすい“ノーサイド”の精神がある。メディア側がきちんとのラグビートップリーグの情報を伝え、試合の面白さだけでなく、その裏にあるドラマにまで着目できたなら、ラグビー熱が急激に覚めていくなどということはないのではないだろうか。

中にはスコットランド協会の舌禍問題やウルグアイの一部選手による泥酔事件など、残念な出来事もあったが、大会そのものは概ね爽やかで、感動的なエピソードに包まれている。何より日本代表が快進撃を続け、ベスト8にまで残っている。少なくともここまでは、運営的にもビジネス的にも成功と言えるだろう。気の早い関係者は、「20年後にまた」と期待を寄せているという。

しかしまだ、ラグビーワールドカップ2019日本大会は終わっていない。週末からいよいよ決勝トーナメントが始まる。いったいどんな素晴らしい試合を見せてもらえるのか。どんな感動的なドラマが生まれるのか、楽しみでならない。

文=エンターバンク

【おでかけネコ・ニャン太】ラグビーワールドカップ 調布ファンゾーンへ行ってきました(後編)

こんにちは、おでかけネコのニャン太と申します。東京・新宿にあるエンターバンクという会社の片隅に、社長さん(私は大家さんと呼んでいます)のご厚意で居候させてもらっています。ただし条件が一つ。大家さんと一緒に、時々お出かけして、その様子をレポートすること。まぁ本当に時々ですし、それで住まわせてもらえるならいいかと思って、こうしてたまにお付き合いで出かけているのです。

今回はラグビーワールドカップの調布ファンゾーン紹介の後編です。

前回はファンゾーンの外側にある屋台ブースやキッチンカーと、ファンゾーン内部の一部施設を紹介しました。今回はファンゾーンでの食事からスタートです。

アイリッシュキッチンの「チキン&チップス」をいただきました

さて、そろそろお腹が空いてきました。ファンゾーンの中には牛タンや伊勢うどんなどのブースが出ていましたが、今回は アイリッシュキッチンという屋台へ。 イギリスの代表的なフードといえば「フィッシュ&チップス」 。メニューにあったので頼もうとしたら、その隣にチキン&チップス」という文字を発見。チキン好きの私は迷わずこちらを注文しました。「フィッシュ&チップス」より100円安いですしね。

アイリッシュキッチンでは「いらっしゃ~い!」とお姉さんが笑顔で迎えてくれました。「チキン&チップスくださいな」「ハイ、どうぞ!600円です」「あ、お金は後ろの大家さんが払います」

中身を拝見。チリソースがかかったチキンが5ピースに、ポテト、グリーンピース。黄色いのはマヨネーズです。けっこう量がありますね。食べ応えがありそうです。

ファンゾーンの中にはベンチなどがありません。立って飲食するのが基本のようです。今回はたまたま空いていた植込みの縁石を拝借していただくことにします。「ああ、美味しそうです。ガマンした甲斐がありました。いただきま…えっ?写真撮るからまだ食べちゃダメなんですか」

早く撮ってください

チキンはカリっと揚がっていて噛み応えがありました。鶏肉はささ身のようで、ヘルシーな感じがしました。ネコにはたまりません。チリソースとマヨネーズ、2つの味が楽しめるのもいいです。写真を撮るというので冷めてしまいましたが、出来立てだったらさらに美味しかったんでしょうね。。。

飲み物を買うのを忘れました

忘れちゃいけないのがビールです。ラグビーワールドカップのメインスポンサーがハイネケン社というビールメーカーなので、ファンゾーンで飲めるのはハイネケン限定です。そのかわり、大会限定のラベルのビールが飲めるんですよ。ではさっそく……。私、下戸でした。全然飲めないことを忘れていました。こんなことならさっきアイスを買ってもらうんでした。

飲めないのをすっかり忘れてました

ご飯を食べ終わってステージの方へ戻ってみると、さらに人が増えていました。どうやらオーストラリア対ウルグアイのパブリックビューイングが始まったようです。さすがに試合が始まると人口密度が高くなります。この後、イングランド対アルゼンチン、そして夜には日本対サモアの試合があるので、これからますます混雑してくるのでしょう。

混雑を避けて再びファンゾーンの外へ。まだまだ屋台群がありました

この日は日本対サモアの試合があったので、パブリックビューイングでの観戦も考えましたが、もう席がなさそうだったのであきらめることにしました。 そもそも今回の目的はファンゾーンの様子を見ることだったので、混雑がピークになる前にファンゾーンを出ることにしました。 日本対サモア の試合開始まではまだかなり時間があるので、家に帰ってからじっくり見ることにしましょう。

外へ出ると先ほどまで子ども向けの体験ゾーンだった場所が、シートを敷いた人たちであふれかえっていました。係の人に話を聞くと、正面のビックカメラの壁面を使ったパブリックビューイングが開催されるそうです。ああ、知っていればこっちに並んだのに。

ビックカメラの巨大壁面を使ったパブリックビューイング。迫力ありそうです
ちなみにビックカメラ入り口の自動販売機がラグビー仕様になっていました

さっきは気づかなかったのですが、駅前のビックカメラの先にも屋台ブースがたくさん並んでいました。調布のブースにはなぜかダルマが。くるくる回ります。調布にある深大寺というお寺が「だるま市」で有名なんだそうです。

ビックカメラの先にも屋台群が!
くるくる回る台座に乗っかったダルマ。おじさんが勢いよく回していました

そしてその横にはラグビー日本代表のユニフォームを着たゲゲゲの鬼太郎のパネルが。原作の故・水木しげる先生が調布に住んでいらっしゃったそうですよ。ドラマにもなったそうだから知っている方も多いのではないでしょうか。ということでダルマと鬼太郎と私とで3ショット写真を撮りました。

鬼太郎が着ているのは前回大会の日本代表ユニフォームなんですって

調布を拠点にした社会福祉法人新の会のブース。知的障がいをもった子を育てる保護者が中心となって設立された団体だそうです。こちらのブースでは「ゲゲゲの鬼太郎妖怪焼き」という焼き菓子を販売していました。私が見上げるほど大きい目玉おやじが目印です。

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巨大な目玉おやじが気になって、せっかく買った妖怪焼きの写真を撮り忘れましたよ

屋台群の一番奥にかき氷とお好み焼き&焼きそばの屋台がありました。キッチンカーの横には簡易テーブルとイスが設けられていたので、ここで一休みすることにします。私はアイスをガマンし、ビールも飲んでいないので、ここでかき氷を買ってもらいました。一番高い「レインボー」というやつを頼んじゃいました。1日中付き合ったんだから、これくらいのごほうび、いいですよね。

色とりどりのかき氷は500円。1日の疲れを癒してくれます

ということで、簡単ですが調布のラグビーワールドカップ・ファンゾーンを紹介しました。気を付けたいのは、このファンゾーンは毎日行われているのではないということ。基本的に試合のある日と土日を中心に開催されています。詳しくは以下のリンク先を見てくださいね。

■東京都ラグビー情報 調布ファンゾーンタイムテーブル

ラグビーをより楽しみたい人は関連イベントが多いファンゾーンの中がおススメですが、人気の対戦がある日は入場規制がかかることも多いそうです。中へ入りたい人は早めのお出かけをおススメします。私のようなお祭り気分を味わいたい人は、ファンゾーンの外側だけでも十分に楽しめると思います。

以上、おでかけネコ・ニャン太のレポートでした。

取材・文=エンターバンク

【おでかけネコ・ニャン太】ラグビーワールドカップ 調布ファンゾーンへ行ってきました(前編)

こんにちは、おでかけネコのニャン太と申します。東京・新宿にあるエンターバンクという会社の片隅に、社長さん(私は大家さんと呼んでいます)のご厚意で居候させてもらっています。ただし条件が一つ。大家さんと一緒に、時々お出かけして、その様子をレポートすること。まぁ本当に時々ですし、それで住まわせてもらえるならいいかと思って、こうしてたまにお付き合いで出かけているのです。

京王線・調布駅前にラグビーワールドカップを盛り上げるファンゾーンが出現

さて、世間ではラグビーワールドカップが盛り上がっています。そこで今回は調布へお出かけしました。というのも調布駅前の広場で9/20~11/2の期間、ラグビ―ワールドカップのパブリックビューイングや、関連イベントなどが行われているそうなのです。ファンゾーンというもので、日本全国12地区18カ所にあるそうです。東京では有楽町と調布の2カ所あります。

新宿から京王線の特急電車で約15分。23区外なのにすごく近い感じがします

調布駅を出るとすぐ目の前にファンゾーンが現れました。 これなら迷うことはなさそうです。 ラグビー日本代表のユニフォームに身をまとった人、海外からおそらく自国チームの応援に来ているであろう方。いろんな人が行き来しています。そんな中で真っ先に目についたのは、大会マスコットキャラクターと写真が撮れるフォトスポット。早速記念写真を取らせてもらいました。

飲食ブース以外にも、お菓子がもらえるアンケートや東京タワーのペーパーキット体験などがありました

日本の伝統芸能、連獅子がモチーフのキャラクターです。白い方が「レン」、赤い方が「ジー」という名前で、二人そろって「レンジー」というそうです。兄弟かと思ったら親子なんですって。たぶん「レン」がお父さんだと思います。二人の間に入って記念写真を撮りました。

ぎこちないですか?どんなポーズをとればいいのかわかりません。

レンジーのフォトスポットのすぐ後ろに真っ赤なたてがみを発見。連獅子の扮装もできるみたいでした。白いたてがみもあったので、二人で行けば「レンジー」になり切れます。

残念ながら私の頭には大きすぎました

ファンゾーンの外側には地域の名産が集まるフード屋台が並ぶ

ファンゾーンの外側にはたくさんの屋台やキッチンカーが並んでいました。ワールドカップ参加国や、調布市やあきる野市など東京23区以外の名産品などが販売されていました。

ファンゾーンに入らなくても楽しめます。東京23区以外の都市の宣伝ブースが目立ちました

ラグビー普及ブース。ジャパンラグビー・トップリーグに所属するチームのユニフォームなどが飾られています 。

この他、ラグビー部がある東京の中学・高校のリストもありました。大家さんの娘さんが通っていた高校も載っていたそうですよ

あきる野市のブース。スモークチキン焼きそばという魅力的なフードが売っていました。鶏肉は大好物ですが、ファンゾーンの中にもきっといろいろ売っているでしょうから、ここはガマンです。

このブース、ものすごくいい臭いを発していました
食べたいけど、ここはガマン、ガマン!

アルゼンチン大使館のブース。アルゼンチンワインが2000円。私はお酒を飲まないので、これが安いのかどうかわかりません。

大家さんが飲みたそうでしたが、ビールのためにガマンしていました

どこの地域というわけではなさそうですが、ブームとなっているタピオカのキッチンカーもありました。とりあえず撮っておきますか。その向かいのアルゼンチンのブースには、顔出しパネルがありました。とりあえず顔だしておききますか。

タピオカは若い人の間で大ブームだそうです
こういうのを見ると顔を出さないわけにはいきません

東村山市のシャモアという洋菓子屋さんのブース。アイスクリームが美味しそうでしたが、同行人の大家さんが「中でビールを飲むからガマン」とのこと。サブレを買ったら一緒に写真を撮ってくれました。お父さん、ありがとう!

もう少しやさしく抱いてください

日野市のブースでは、新選組の羽織をきて記念撮影ができました。一番小さい子ども用の衣装を借りたのですが、それでも私には大きかったようです。

羽織が大きすぎましたね。ブカブカです

ラグビー体験コーナーでは、楽しく遊ぶ子どもたちの姿と声

飲食ブースの反対側の広場がなにやら楽しそうです。小さな子どもを対象にしたラグビー体験ができるようです。 ラインアウトで投げ入れたボールを、より高い位置で捕るために選手をリフトするタワーが体験できます。楽しそうな子どもたちをお父さんがスマホでパシャパシャ撮っています。いい思い出になるといいですね。

大きなお兄さんに肩車されて子どもたちも大喜びです

体験を怖がってお父さんから離れない子どもを見て、「じゃあ、お父さんごと持ちあげちゃおうか?」。さすが屈強なラガーマンです。

子どもを抱えた大人でも持ち上げちゃいます

さらに隣の広場ではラガーマンの妨害を切り抜けてトライを目指すコーナーが。これはもう本当に、子どもたちがキャッキャッと楽しそうに体験していました。きっと鬼ごっこの延長のような感覚なんでしょうね。中には選手のお兄さんたちに体ごとぶつかっていく猛者もいました。周囲からは歓声があがっていましたよ。でも私ならもっと俊敏に選手の間を抜けられると思います。これでも一応ネコですから。

大きなお兄さんに追いかけられて大はしゃぎです
中にはお兄さんにぶつかっていく猛者もいました

いよいよファンゾーンの中へ!より深いラグビーワールドカップの世界が広がる

ではそろそろファンゾーンの中へ入ってみましょう。おお、すごい人です!この日の夜は日本対サモアの試合。ファンゾーンでもパブリックビューイングを予定しています。まだ午後2時だというのに外側とは比べものにならない混雑です。

ようこそ!ファンゾーンへ!
思ったほど広い感じがしなかったのは人口密度のせいでしょうか

ユニークな外国人3人組を発見。力士に肩車されるコスプレで注目を集めていました。こんなのどこに売っているんでしょうね?

おそろいのコスプレでノリノリの3人組。気軽に撮影に応えていました

ファンゾーンの内側は東京名物だけではないようです。仙台名物の牛タンや、 三重県の伊勢うどんのキッチンカーも出店。外国人の方たちが珍しそうに並んでいました。またレンジーグッズや大会公式グッズが売られているショップもありました。

飲食ブースは大盛況です
レンジーグッズのショップもありました

5GのVR体験ができるブースがありました。観客席やグラウンドレベルでの視点が体験できるそうです。ゴーグルが私の頭には大きすぎて体験はできませんでしたが、前に並んでいたお姉さんが写真を撮ってもいいですよと言ってくれたので、後ろ姿だけ撮らせてもらいました。どうしてキョロキョロしているんでしょうね。お姉さんは体験してみればわかるって言ってましたけど。

5Gは大きなデータを瞬時で送れる技術。今後のスポーツ中継などが大きく変わりそうです
ゴーグルを付けたとたん、上下左右を見回すお姉さん。いったい何が?

体験が終了すると小さなコインがもらえます。ブースの前にあるガチャ専用コインなんですって。大家さんはラグビーワールドカップのロゴが入ったスマホ用リングが当たりました。大してラグビーのこと知らないとか言ってたくせに、なんだかうれしそうですよ。

メルカリで1000円くらいで売られているのを見て大家さんがニヤついてました
「売らないよ!」(大家)

ステージではイベントが行われていました。トップリーグ・東芝ブレイブルーパスの選手がトークイベントをしていました。試合が始まると後ろの大型モニターでパブリックビューイングできるようになります。調布のファンゾーンでは、写真奥に見える隣接するホールでもパブリックビューイングが行わるそうです。

ステージでは常に何かしらのイベントが行われています

ということで今回はここまで。次回はファンゾーンの内側の続きと、駅前の先にさらに伸びていた屋台街を紹介します! そう遅くない時期にアップするのでお楽しみに!

取材・文=エンターバンク

働き方改革の本命、テレワークは果たして定着するのか?

テレワークという働き方が注目されて数年経つが、では自分の周囲で活用している人間がいるかとなると、案外少ないのではないだろうか。これにはいくつか理由が考えられるが、その前にまず、テレワークについて少し説明しておこう。

テレワーク環境があっても、7割が全く利用できていない現実

テレワークとは、ICT(情報通信技術=Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことで、自宅で作業をする「在宅勤務」、顧客先や移動中にパソコンや携帯電話を使って働く「モバイルワーク」、勤務先以外のオフィススペースを利用する「サテライトオフィス勤務」と、働く場所によって3つの形態に分けられる。政府が目指す一億総活躍社会といった社会問題の解決手段としても期待されていたり、来年のTOKYO 2020 オリンピック・パラリンピックで都心に集中する交通混雑を緩和するための施策としても注目されている。

しかしこれらの期待とは裏腹に、決して定着しているわけではない。ワークスイッチコンサルティングが7月に発表した「首都圏ビジネスパーソンの通勤とテレワークに関する実態調査」によると、「制度が導入されている」「制度はなくても実際テレワークできる状態にある」が、400人中145人と一定数いる反面、その145人に週のうち何日テレワーク勤務をしているかを聞いてみると、週0日が105人もいるのだ。これにはいろいろな理由が考えられる。

テレワークが定着しないのは「雰囲気」だけの問題ではない?

同実態調査では、「利用しやすい雰囲気づくり」「上司の理解」に原因があるとのではないかと指摘している。確かに日本では決められたオフィスに朝早くから出社して、夜遅くまで仕事をすることが良しとされてきた。上司が残業しているのに自分だけ定時に帰るのは気が引けるし、出社せずに仕事をするなんてなおさら気まずい。会社側でせっかく制度を用意しても、上司をはじめとする周囲の理解がないと利用しづらいのは当然のことだ。中でも50代以上の管理職は、新しい職務制度になかなかなじめず、“抵抗勢力”的な存在として扱われているという。テレワーク定着のためには、まず彼らの意識改革が求められているのだ。

この説は確かに納得できるものだ。しかし私にはどうも原因はそれだけではないように思えてならない。まず業種の問題。テレワークは基本的に一人で行うものだ。もちろんプロジェクト化して、インターネットを通してコミュニケーションを取りながら進めていくのだが、基本は在宅で作業するイメージが強い。IT系のエンジニアやアナリスト、デザイナー、ライター業などはテレワークとの親和は高いだろう。しかし在宅でできる仕事は実際には限られている。工場のラインや建築現場の作業、実店舗の勤務などは、その場所へ行かなければ仕事にならない。

テレワークは「出来上がったビジネスパーソン」にとって有効な制度

テレワーカー同士でプロジェクト化した業務は実際にあるが、ネット上で複数人がバラバラにコミュニケーションを取るより、同じフロアに集まった方が作業効率はいいということも多い。日本テレワーク協会客員研究員の椎葉怜子氏は、テレワークを定着させるポイントとして、「出社時と同等、またはそれ以上の生産性を保てること」だと指摘している。「出社時よりも生産性が向上する」としてしまうとハードルが上がりすぎてしまうのだという。つまりテレワークそのものは、現状では直接的な生産性向上を目的としたものではないということだ。どちらかといえば、働き手に時間の余裕ができて幸福度が上がるのであれば当面はよしとする。しかし企業であるからには当然、生産性は向上したい。こうなるともう会社がどう考えるかという問題になってくる。

そして私が最も定着しにくい理由と考えているのが、テレワークは「出来上がったビジネスパーソン」にとって有効な制度だということだ。テレワークは空間的に精神的にも一人で作業をする。周囲に頼れる人間がいないわけだから、確かな技術力と解決力、そして判断力が求められるのだ。まだ仕事を覚えていない新人や経験の浅い社員では、対応できないシーンに直面することも多いだろう。そこでいちいちメールで上司にお伺いを立てるくらいなら、最初から上司の隣の席で仕事をする方がいい。そしてそんな若手たちに仕事を教える立場の人間が、テレワークで会社にいないという状況も避けたいはずなのだ。

テレワークはワーカーが、状況によって選択できる働き方

私は「だからテレワークは定着しない」と言いたいわけではない。テレワークに向いている職業は確実にあるし、テレワークによる生産性向上はまだ途上段階であって、今後上昇していく可能性のほうが高い。若手教育などは、会社の制度次第でどうにでもできる。

今年に入って、ある知人の会社がフリーアドレス制となり、テレワークを推奨しはじめたという。面白いなと思ったのが、その知人が「会社に来てはいけない」という意識を強く持っていたことだ。「制度があるから使わなくてはいけない」という強迫観念のようなものがあるのだ。案外こういう人は多いのかもしれないと感じた。

テレワークは「使わなくてはいけないもの」ではなく、「使ってもいい権利」だ。たとえば今年の夏は猛暑が多く、熱中症で倒れる人のニュースが多かった。また関東地方を夜半に台風が直撃して、交通網がマヒしたこともあった。私の自宅の最寄り駅では、改札に入るために、駅前の商店街を縦断するほどの行列ができた。果たしてそこまでして会社に行かなければいけないのか。

私はテレワークは定着すべきだと思っている。「子どもが熱を出したから」「明日は大雨らしいから」。そんな理由でいい。状況によって自宅で作業することが選択できると考えると、ずいぶんと心のハードルは下がるのではないだろうか。

歴史的珍事“振り逃げ3ラン”の試合に見る、高校野球・神奈川県勢のレベルの高さ

夏の甲子園が100回大会を迎えた2018年。「松村邦洋の高校野球ベストバウト」(洋泉社)という書籍の編集を手伝う機会を得た。主な仕事の一つが、内容の裏取りをし、修正・捕捉していくこと。1998年、豊田大谷(愛知)vs宇部商(山口)での藤田修平投手の延長15回サヨナラボーク。2007年の決勝戦、佐賀北(佐賀)旋風の前に散った、野村佑輔(広島)&小林誠司(巨人)の広陵(広島)バッテリーなど、忘れかけていたエピソードや、意外なところで有名選手の名前に出会うこともあり、実に楽しい時間だった。

そんな中。気になる記事を見つけた。

「東海大相模が振り逃げ3ラン」

振り逃げ3ラン? そんなことあるのか? 

なんだか気になって記事をクリックしてみた。

強豪校激突の神奈川県大会準決勝で事件は起こった

舞台は2007年の89回大会、神奈川県大会準決勝。東海大相模vs横浜。どちらも甲子園の常連校で、多くのプロ野球選手を輩出してきた名門校。地区予選ならではの、高校野球ファンにはたまらない組み合わせだ。

0-0で迎えた4回表、東海大相模の攻撃で、それは起きた。この回、打線がつながり東海大相模は3点を先取。なお2アウト一、三塁のチャンスが続く。ここでバッターは9番ピッチャー。横浜としては確実にアウトを取って、次の攻撃に備えたいところだ。

カウント2-2からの投球は外角に鋭く落ちるスライダー。ボールはショートバウンドしてキャッチャーのミットに収まった。打者はバットを途中で止めており、キャッチャーがハーフスイングのジャッジを求める。一塁塁審はスイングと判定。それを受けて球審の拳が上がった。

「ああ、スイングですか!バットが回ってしまいました。二人のランナー、残塁と終わってしまいました」と、やや残念そうな実況の声。

三振を確認したキャッチャーがボールをサードへ回し、横浜ナインはベンチへと引き上げていく。バッターも手袋を外そうとするのだが、少し様子がおかしい。どうやらベンチから何か指示が出たようで、急に一塁に向かって駆け出したのだ。

「ん?待ってくださいよ。2アウト一塁、三塁ですから振り逃げが成立するケースですね」。いち早く実況アナが気付いた。解説者が「どのように捕球しているかですね」と続ける。この時、横浜ナインはすでにベンチ前で、次の攻撃に備え円陣を組んでいた。

その間にバッターランナーは二塁ベースまで到達。いったん立ち止まり、再度ベンチを覗き込むような仕草をしたあと、確信を持ったようにホームまで一気に走り抜けた。

三振してもアウトにならない、ややこしいルール“振り逃げ”

「振り逃げ」について、あらためて調べてみた。

通常、バッターはストライクを3回宣告されると三振となり、アウトが加算される。しかしそうならない場合がある。条件は次の通りだ。

①一塁に走者がいない。または2アウトである

②第3ストライクの投球をキャッチャーが正規に捕球していない

正規の捕球とは、投手の投げたボールが、地面に触れることなくキャッチャーのミットに収まることを指す。つまりワンバウンドでのキャッチは正規の捕球にはならない。

ルールでは、上記2つの条件が満たされた場合、バッターは一塁への進塁を試みることができるとされている。三振とアウトは別物といった方がわかりやすいだろうか。つまり①の状況下で3ストライク目をキャッチャーが正規捕球できなかった場合、記録は三振だが、まだアウトにはなっておらず、バッターには進塁の権利が発生する。そしてこのバッターをアウトにするためには、守備側は一塁到達前に打者走者にタッチするか、内野ゴロと同じように一塁ベースに蝕球しなければならない。

振り逃げ3ランがなければ、試合の勝者は変わっていたかもしれない

 話を試合に戻そう。横浜のピッチャーが投じたボールは明らかにワンバウンドしている。東海大相模の門馬敬治監督はそれを見逃さず、バッターに適確に指示を出した。一方の横浜のキャッチャーはアウトだと勘違いした。そして渡辺元智監督と横浜ナインも、それに気づくことができなかった。

打者走者がホームを踏んだ瞬間、球審は他の塁審を集めて協議に入り、その後、両チームに対して説明を始めた。渡辺監督は身ぶり手ぶりを交え、懸命に抗議しているように見える。そして約5分後、横浜の選手がグラウンドへ飛び出し、元の守備位置へと着いた。

球審がマイクを使って、スタンドの観衆に向かってプレーの説明を行う。やや早口で、彼自身も興奮気味なのがわかる。

「ただ今、打者のハーフスイングで、球審から一塁の塁審にリクエストをしました。リクエストをしてスイング。その時点で3ストライクですが、まだ三振(アウト?)ではありません。球審は、“今のはスイングだよ”ということを指示しました。ですからまだアウトになっていないわけです。タッグ(タッチのこと)もないということで得点は認めます。以上」

固唾をのんで説明を聞いていたスタンドがどっと沸き上がる。一挙に3点追加で6-0。伝説の振り逃げ3ランの完成だ。

 その後、横浜は猛反撃を見せるが、最終的には6-4で東海大相模が勝利を収めた。その差は2点。「たられば」になってしまうが、もし振り逃げ3ランがなければ3-4で横浜が勝っていたかもしれない。そう思うと、なんとも切ないスコアだ。

この試合に絡んでいた有名選手とは?

ところでこのエピソードはこれで終わりではない。この試合に出場していた選手について触れないわけにいかないのだ。

実は振り逃げをした東海大相模の選手こそ、現在日本を代表する投手となった菅野智之(巨人)その人だった。当時高校3年生。この話は案外有名で、ネットで検索すればたくさんの情報がヒットする。高校野球好きなら知っている人も多いかもしれない。

そしてここからはあまり知られていないのだが、この試合で横浜の三塁を守っていたのが、現在「ニッポンの4番」と評される筒香嘉智(DeNA)だった。当時はまだあどけなさが残る1年生。そして筒香に替わり、途中から守備に入ったのが、筒香の1年先輩にあたる倉本寿彦(DeNA)。さらにショートを守っていたのが、この年の秋に阪神タイガースから高校生ドラフトで1位指名される髙濱卓也(現ロッテ)。4番ファーストで出場していたのが、日本ハムから高校生ドラフトで4位指名され、のちにDeNAへと移籍した土屋健二(引退)。プロでは投手として活躍したが、この時点では打力を買われ、野手兼控え投手だった。

一方の東海大相模だが、この試合で4番を打っていたのが、2008年巨人のドラフト1位、太田泰示だ。巨人時代は未完の大器と呼ばれたが、日本ハムに移籍後は2年連続二けた本塁打を放ち、才能を開花させた。セカンドで出場していた内田翔太は、現在中日に在籍している友永翔太のこと。国際武道大から日本通運を経てのプロ入りで、太田とともに菅野の1学年下にあたる。さらに菅野の同級生で、この試合でショートを守っていたのが、リードオフマンとして広島のリーグ3連覇に貢献した田中広輔だった。

実に豪華な顔ぶれではないか。振り逃げ3ランばかりがクローズアップされる試合だが、出場選手の顔ぶれをみれば、神奈川県の高校野球のレベルの高さが伺える試合でもあったのだ。

なお東海大相模は、決勝戦で桐光学園に10-8で敗れ、甲子園出場を逃している。そしてこの年の桐光学園のメンバーで、プロへと進んだ者はいない。神奈川県の野球のレベルの高さを物語ると同時に、なんとも皮肉なエピソードとなってしまった。