コロナの影響で延期されていた2020年プロ野球が、いよいよ6月19日(金)に開幕する。開幕日が近づくにつれ、スポーツ新聞では評論家による順位予想が目立つようになってきた。その順位予想だが、例年と少し違うのが、セ・リーグの優勝候補に横浜DeNAベイスターズを挙げる評論家が多いこと。OBの齊藤明雄氏はわかるにしても、岡田彰布氏、有藤道世氏、森繁和氏、梨田昌孝氏、真中満氏らがDeNAを優勝候補に挙げているのだ。しかし、長年ベイスターズを応援している身からすると、「そう簡単にはいかないぞ」という心配事がある。

強打者が並ぶスタメン。その前を誰が打つのか?
DeNAといえば不動の4番打者・筒香嘉智がメジャー移籍し、大幅な戦力ダウンと思われていた。しかし、その筒香のあとを受けてキャプテンに就任した佐野恵太が、練習試合後半から調子をあげてきており、さらに新外国人選手のオースティンも打率.423、3本塁打と絶好調。評論家たちがDeNAを上位に予想するのは、筒香の穴は十分埋められたと判断したからだろう。加えて3年連続の本塁打王に期待がかかるソト、DeNA在籍の5年間すべてで25本塁打以上を放つロペス、17年首位打者の宮﨑敏郎と、打者は2番から6番までは相手投手には脅威の顔ぶれだ。
2番 オースティン(右)
3番 ソト(二)
4番 佐野(左)
5番 ロペス(一)
6番 宮﨑(三)
そう。「2番から6番までは」だ。7~9番は守備を重視して、ショート、キャッチャー、そして投手になる。実はDeNAの長年の課題となっているのが、「1番打者」なのだ。
DeNAになってから8年間、開幕戦では、昨年が神里和毅、一昨年が移籍1年目の大和が1番を務めた。それ以前では荒波翔、石川雄洋、桑原将志が2回ずつ。荒波は引退しているし、石川はすでにベテランの域に入っている。ショートを守る大和は打力より守備力を優先しての器用。さらに空いているポジションはセンター(外野)のみ。そう考えると、1番打者候補は絞られてくる。

ラミレス監督が挙げた4人の「1番打者候補」とは?
先日ラミレス監督に「1番打者」について質問する機会があった。クリーンナップとその前後の顔ぶれに比べ、1番打者が固定できていないことについて問うと、「確かにその通りです」と認めながら、次のように続けた。
「候補は4人。梶谷隆幸、神里、桑原、乙坂智です」
名前の順番が期待値と考えていいだろう。
梶谷隆幸
19年成績●41試合 打率.215 5本塁打 3盗塁

レギュラーとして100試合以上に出場した14~17年の4年間すべてで、100三振以上。時に淡白なバッティングをしてしまう傾向はあるが、盗塁技術に関してはチーム随一。足のあるランナーが塁上にいることで、相手バッテリーは打者とランナーの二人と戦わなければならない。足を警戒すればストレートが多くなり、強打の2番打者には有利に。逆に打者を警戒すればランナーは次の塁を狙いやすくなる。体調に問題さえなければ、梶谷が1番打者の筆頭であることは間違いない。
神里和毅
19年成績●123試合 打率.279 6本塁打 15盗塁

攻・走・守のバランスはトップクラス。しかし長いシーズンでは好不調の波が大きかった。特に一度不振に陥ると、なかなか調子を取り戻せなかった。この2年は体調管理との戦いでもあった。本人も「疲れが出てからケアするのでは遅い。日常的に気を配れるようにしたい」と語っている。チームの本音としてはベテランの梶谷より、5年は計算できる神里に1番を打ってもらいたいはず。シーズンを安定して乗り切れるようになれば、「1番センター神里」がDeNAの定番になるかもしれない。
桑原将志
19年成績●72試合 打率.186 2本塁打 2盗塁

明るく元気なチームのムードメーカー。思い切りのよいバッティングが持ち味で、足でも3度の二けた盗塁を記録。桑原が出塁することでチームに勢いをもたらすことは間違いない。しかし反面三振数が多いのが気になるところ。ファーストストライクを狙っていくバッティングはラミレス監督の信条でもあるが、実は以前の桑原は粘り強いバッティングが持ち味だった。14年7月の阪神戦。その年に最多勝を獲ることになるメッセンジャーに、3打席で29球を投げさせた姿は強烈な印象として残っている。1番打者の役割の一つに、相手投手の調子を見極めるために、第一打席で球数を投げさせることがある。桑原がかつての粘りを取り戻したら、レギュラー復活のチャンスが出てくるかもしれない。
乙坂 智
19年成績●97試合 打率.245 2本塁打 6盗塁

プロ入り後、特筆できる成績は残せていないが、野球に取り組む姿勢は負けていない。17年オフには自分で受け入れ先を探してメキシコ・ウィンターリーグに参加。言葉が通じない中、ファイトあふれるプレーで現地のファンを魅了。チームが乙坂グッズを販売するまでになった。成績的にも27試合で打率4割1分の大活躍で、メキシコ球界に爪痕を残した。
「オトサカは間違いなくレギュラーを獲れるだけのポテンシャルを持っている」
ラミレス監督は就任当初から乙坂の身体能力の高さに注目していた。そのことは今回の1番打者候補に名前を挙げたことからもわかる。他の3人に比べると現時点では「1番センター」から最も遠い位置にいるが、きっかけ一つで大ブレイクする可能性を秘めている。筒香直系の後輩となる地元・横浜高校出身のレギュラー選手はチーム、ファン共に待ち望むところ。成績以上の期待値も含めて注目していきたい。
ラミレス監督が重視する1番打者の条件は“出塁率”

ラミレス監督に「1番打者に求めるもの」を尋ねると、少し間をおいてから「出塁率」と答えた。打撃や盗塁も大切だがラミレス監督によると、「3割5分から4割近い出塁率が欲しい」ということだった。ちなみに広島が3連覇した16~18年の不動の1番打者、田中広輔の、この3年間の出塁率は3割6分を超え、17年はリーグトップの.398を記録している。
では昨年の4人の出塁率を見てみよう。
●1番打者候補の19年出塁率
梶谷 .330(110打席) 神里 .323(458打席)
桑原 .259(115打席) 乙坂 .313(179打席)
残念ながらラミレス監督の要望を満たす選手は、現時点ではいないことになる。裏を返せば誰にも可能性があるということだ。
ラミレス監督は「1番打者に高打率を望んでいるわけではない」と言う。つまり出塁率を上げるには、安打以外の出塁=四球をいかに選んでいくかがポイントになる。今度は昨年の4人の選四球率を見てみる。
●1番打者候補の19年選四球率
梶谷 .1455(110打席) 神里 .0568(458打席)
桑原 .0783(115打席) 乙坂 .0782(179打席)
※四球(敬遠除く)÷打席数
こうしてみると、梶谷選手が圧倒的に高い数字を残していることがわかる。前述した田中広輔が最も四球を選んだ17年は、679打席に対して89個。率にして.1311。分母に大きな差はあるが、胸を張っていい数字ではないだろうか。
6月16日に行われた、オンライン ファン・ミーティングで、ラミレス監督は開幕戦のスターティングメンバーを発表した。真っ先に名前を呼ばれたのは「1番センター・梶谷」だった。
よほどのアクシデントがない限り、20年の開幕ゲームは、梶谷が1番センターで出場するだろう。しかし今回上げた4人は、それぞれに一長一短がある。ファンの一人として1番打者の固定を願う一方、もう少しトップバッター争いを見ていたい気持ちもある。
評論家たちが「優勝候補」にあげる、横浜DeNAベイスターズの2020年がいよいよ始まる。6月19日、スコアボードに記される1番バッターは果たして誰なのか?楽しみに待ちたい。
文=小貫正貴(エンターバンク)