横浜DeNAベイスターズ、筒香のあとを継ぐ者たち

横浜DeNAベイスターズ、筒香嘉智のあとを継ぐ者たち

プロ野球12球団が一斉にキャンプインした。

実績のある選手は自分のペースで仕上げていくことが許されるが、レギュラーや一軍定着を狙う若手選手にとっては、またとないアピールの場。自主トレでしっかりと身体を作り込み、キャンプ初日から監督やコーチの目に留まるべく、積極的な姿勢を見せなければいけない。

首脳陣にとっても、戦力バランスを見極め、シーズンを通しての戦い方をシミューレトする大事な時期。なかでも横浜DeNAベイスターズ(以下、ベイスターズ)は大きな課題を抱えている。

それは「ポスト筒香嘉智」

DeNAになってからのベイスターズは、誰もが認める筒香のチームだった。昨年オフ、ポスティングによりタンパベイ・レイズへ移籍した筒香の穴を、果たして誰が埋めるのか? ファンも野球解説者も、今季のベイスターズキャンプでもっとも注目するポイントだ。

2019年のドラフトで、ベイスターズは地元神奈川県・桐蔭学園の森敬斗選手を1位指名。2009年の筒香以来の高校生野手の1位指名となった

秋のドラフトで指名されたのは、即戦力でも長距離砲でもなかった

2019年のドラフト会議で、横浜DeNAベイスターズが1位指名したのは、地元神奈川県、桐蔭学園の遊撃手、森敬斗だった。

意外だった。この時点でまだは決まってはいなかったものの、筒香のメジャー移籍は規定路線だった。だから野手を1位指名するのであれば、大砲候補を指名すると思っていたのだ。

それが俊足好打の内野手。確かにここ数年のベイスターズの課題に、「二遊間の固定」がある。昨年は主に大和が遊撃、ソトが二塁を守ることが多かったが、大和は打撃に物足りなさを、ソトは守備面で不安を抱えており、レギュラーポジションと言えるものではなかった。

昨年は打撃力のあるソトと、守備力の高い柴田がおもにセカンドを守った

昨年のドラフトでは、報徳の学園の遊撃手、小園海斗を指名し広島と競合。結果クジをはずしている。だから二遊間を守れる素材型の野手が欲しいことはわかる。しかし「筒香の穴」を埋めるという意味では、一瞬疑問符が付いたのは確かだ。


しかしすぐに思い直した。まず現在のベイスターズには、30本塁打以上を期待できる打者が3人もいるのだ。2年連続ホームラン王のソト、6年連続25本以上のロペス、昨年はケガで114試合15本に終わったものの、2018年に28本塁打を放った宮崎敏郎。全員が右打者という部分は気になるが、これだけ打てる打者が揃っているのなら、なにも無理して大砲を獲る必要はない。

パワーだけでなく、バッティング技術は球界でも随一。今年は3割30本が期待される宮﨑

大砲候補は、すでにここにいる

しかも若手の中には、昨年11試合で4番に座った新キャプテンの佐野、チーム一番の怪力、細川、新人ながら21試合で4本塁打を放った伊藤裕季也など、ブレイクが期待される大砲候補もたくさんいる。さらにに言えば新外国人選手の補強だって怠っていない。

チーム随一の飛ばし屋、細川成也選手。その飛距離に田代コーチも驚きを隠さなかった

数字の部分では実績ある選手。期待値の部分では成長著しい若き大砲候補たち。彼ら一人ひとりが「ポスト筒香」を形成するピースなのだ。

そう考えると、昨年のベイスターズのドラフト戦略はうなづけるものだ。

森は、強肩と広い守備範囲がウリの遊撃手。粗削りながら思いきりのよい打撃と、50m5秒8の脚力も持っている。桐蔭学園時代は主将を務め、凡ミスした選手を叱咤するなどリーダーシップも持ち合わせている。そして何よりまだ18歳と伸びしろも十分だ。

2020年は佐野がキャプテンを務めるが、その前までは筒香が5年間、さらにその前は石川雄洋が3年間務めている。どちらも地元横浜高校出身の高卒野手。筒香は23歳と、歴代最小年齢での就任だった。つまりベスターズは、5年後にチームの中心にいて、キャプテンを任せられる人材を獲得したといっていい。そういう意味では、森もポスト筒香の一人といっていいだろう。

筒香からキャプテンを引き継いだ佐野。本来は内野手だが、出場機会を求めて外野にも挑戦。広陵高3年から明大3年途中までは捕手も経験している

ポスト筒香は一人ではない。そもそも筒香の代りは存在しない

昨年末、ポスト筒香について、ラミレス監督に話を聞いたとき「選手として、キャプテンとして、彼は特別な存在だった。誰も彼の代わりを務めることはできない」と言っていた。つまりベイスターズはポスト筒香を、現在の主力、成長中の若手、期待の新人選手らで分担させようとしているのだ。

筒香に代わる選手を探すのではなく、選手一人ひとりが、それぞれの個性でカバーしていく。とても健全な取り組みだと思う。

「 (筒香に代わる)ベストな選手はいないが、みんなで補えばいいチームになる 」とラミレス監督

DeNAになってから、今年で9回目のシーズン。 ベイスターズは、若返り に成功し、DeNA以前から在籍する選手は、石川雄洋、梶谷隆幸、国吉祐樹ら数えるほどになってきた。

現在のメンバーは実に個性派ぞろいだ。今後は筒香とはまた違ったタイプの中心選手が生まれてくるだろう。ひょっとしたらここで名前を挙げなかった選手が台頭してくるかもしれない。なんだかワクワクしてくる。さらに楽しくキャンプを見ることができそうだ。

文=小貫正貴