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横浜DeNAベイスターズ、強さを支える三浦イズム「1歩ずつ積み上げていくしかない」

横浜DeNAベイスターズの勢いが止まらない。8月22日時点で首位ヤクルトに4ゲーム差の2位につけている。ドラマティックな逆転劇もあれば、意外な選手の活躍で勝利を掴むこともある。シナリオのないドラマとはよく言ったものだ。


強いチームは投打のバランスが良いといわれる。現在のDeNAももちろんそうなのだが、実は選手と監督・コーチ陣のバランスもとてもいいと感じている。


今年のセ・リーグは、ヤクルトの独走状態だった。一時はヤクルト以外が勝率5割を下回るほどで、7月2日にはプロ野球史上最速となるマジック53がヤクルトに点灯している。ヤクルト以外のセ・リーグファンは、心の中では優勝をあきらめていたかもしれない。なんとか3位までに入ってCS進出を目指そう。そう考えてもおかしくないほど、ヤクルトは強かった。


しかし“コロナ”という不確定な要素により、ヤクルトは大きく失速していく。一方でDeNAは、開幕からなかなかそろわなかったベストメンバーが、オールスター以降、顔をそろえるようになってきた。7月は10勝7敗2分。8月は22日現在でなんと14勝2敗! 7月4日時点でヤクルトに最大17.5ゲーム差の5位だったDeNAは、7週間余りで13.5ゲームを追い上げた。


こう書くと何かあっという間の出来事のように感じられるかもしれないが、当然ながらそうではない。今シーズン、三浦大輔監督は、勝っても負けても、インタビューの中で「1歩ずつ積み上げていくしかない」「毎日の積み重ねで来ている」という言葉を繰り返してきた。


プロ野球のゲーム差というのは、1勝で何ゲームも差が縮まるものではない。自分が勝つだけでは0.5ゲームしか縮まらない。相手も負けてやっと1ゲーム縮まる。そう考えると17.5ゲーム差というのは途方もない差なのだ。それでも目の前の試合で、その時できるすべてを出し切って戦い、「1歩ずつ積み上げていく」しかないのだ。それを誰よりもわかっているのが三浦監督だろう。


現役時代の三浦監督。最後の3年間は兼任コーチを務めた


通算負け越し投手の三浦監督だからこその哲学「ここでもう一つアウトを、もう1イニング長く」


三浦監督の現役最終年となった2016年。開幕前にインタビューさせていただいた。当時の選手・三浦は兼任コーチとして3年目を迎えていた。前年2015年のDeNA投手陣のチーム最多勝は、久保康友の8勝。次が自身の6勝だ。規定投球回数に達した者はいない。


当時のラミレス監督から「5~8勝を期待している」と言われた選手・三浦は、「期待を裏切って2ケタ勝利」と自身のシーズン目標を語る一方で、兼任コーチとしての立場で次のような発言をしている。


「投手陣全体に言えるのは、“もうひと踏ん張り”かな。ここでもう一つアウトを取っておけば。もう1イニング長く投げていたら。それによってシーズンの流れが変わることもある。でも、その“あともう少し”が大変なんです」


“あともう少し”の大変さは、三浦監督自身が一番よくわかっている。三浦監督は24年間のプロ生活で通算172勝しているが、一方で184敗を喫している。いわゆる貯金=勝利数が敗戦数を上回ったのは、24年間でわずか5シーズンのみ。もっとも勝った年は、1998年と2005年の12勝が最多だ。通算防御率が3.60なので、投手としての責任は果たせているといっていい。援護に恵まれなかったといえばそれまでだが、三浦自身はそうは考えていなかったようだ。

「あの時、あと1球、あと一人、あと1イニング、自分が粘れていたら流れが変わったかもしれない」

三浦監督は目の前の1球の積み重ねが、もう一人、もう1イニング、そして1勝へとつながっていくことを、痛いほど理解している。だから「1歩ずつ積み上げていくしかない」「毎日の積み重ねで来ている」という言葉が出てくる。


勝つことの難しさを知る1998年V戦士が、三浦監督を支える


たとえ何ゲーム離されようと、可能性がある限りあきらめない。今、その時、できることに全力で向かい合う。一つの勝利に正直に喜び、でもいつまでも浮かれることもなく、次の戦いへの準備を粛々とこなし、また全力で戦いに臨んでいく。


1997年、横浜ベイスターズ(当時)は、首位ヤクルトに3.5ゲーム差までに迫りながら、直接対決で石井一久にノーヒットノーランをくらって失速してしまった。現在のチームならここで気持ちを切り替えるところなのだが、当時のチームは、我々ファンから見ても、気持ちが切れてしまったように見えた。「1歩ずつ積み上げる」ことの難しさに直面し、乗り越えるすべを知らなかった。しかしその難しさを知ることで、1998年にリーグ優勝と日本一を手繰り寄せることができた。


小さな積み重ねが、やがて大きな花を咲かせることを、三浦監督は1997年、1998年を通じて知っている。そして心強いのは、当時の優勝メンバーである齊藤隆、石井琢朗、鈴木尚典がコーチとして三浦監督を支えていることだ。


現在のチームは一部の移籍組を除けば、ほとんどの選手は優勝経験がない。だがその不足分は監督・コーチがカバーすればいい。三浦監督の思いを、しっかりとコーチが現場の選手たちに浸透させていけばいいのだ。


8月22日現在、まだチームは2位だし、ヤクルトが優勢であることに変わりはない。しかし、今できること、目の前の試合を全力で戦い、1歩ずつ積み上げていくことが大事なのだ。今は僕も、毎日の試合を全力で応援していくことにしよう。


(文=小貫正貴)



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